ざっくり言うと

ブラウザやアプリから使うクラウド型のAIに文章を打ち込むと、その文章は手元のパソコンの中だけにとどまりません。インターネットを通って、運営会社のサーバーへ届きます。

サービスや契約、設定によっては、AIを改善するための学習に使われることもあります。学習は、データを読み込ませてAIの性能を上げる作業です。

送信ボタンを押す前に、「この文章を外部の会社へ送っていいか」を一度だけ考えてください。

なかでも危ないのが、顧客名、契約書、まだ公表していない経営の数字を、そのまま貼り付けてしまうことです。 送ってしまえば、自分の手では取り戻せません。 とはいえ、仕組みと線引きさえ分かれば、こわがらずに使えます。

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正確には

個人情報保護委員会は2023年6月、生成AIサービスへ個人情報を含む指示文を入力するときの注意点を公表しました。 事業者に求めているのは、その入力が利用目的の範囲に収まっているかを確かめることです。 本人の同意なく個人データを入力する場合は、提供している事業者がそのデータを機械学習に使わないことなどを、十分に確認するよう求めています。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)も、同じ危険に注意を促しています。 その『情報セキュリティ10大脅威 2026』では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織向け脅威の第3位に初めて選ばれました。 IPAが2026年4月に公開した『AI利用者のためのセキュリティ豆知識』も、クラウドAIへ営業秘密を入力しないことを、利用者向けの基本の対策として挙げています。

情報が外に出る3つの経路

AIに入れた情報が外に出るとしたら、道筋はおおむね次の3つです。

#経路何が起きるか
1学習への再利用入力した内容が、AIの改善(学習)に使われる場合がある。設定でオフにできることが多い
2運営会社のサーバーへの保存規約に沿って、ログが一定の期間保存される。安全に管理されてはいるが、外部からの攻撃や内部の不正のリスクはゼロではない
3改善や安全確認のための見直し設定や契約によっては、改善・安全確認・品質チェックの対象になることがある

3つ目があるからこそ、機密の情報は最初から入れないのが基本です。

OpenAIとAnthropicのプライバシーポリシーにも、入力データの扱い、保存する期間、学習に使うかどうかが書かれています。 ただ、中身は会社ごとに違います。 使うサービスのポリシーは、その都度自分で確かめてください。

入れてよい情報と、入れない情報

仕事で迷ったら、この表で判定してください。

区分例判定
入れてよい一般に公開された情報、個人や取引先を特定できないダミーデータOK
入れる前に要検討自社の業務フロー、社内向けの資料、未公開のアイデア契約・社内ルール・権限・データ設定を確認
原則として入れない顧客名・取引先名・契約書の原文・個人情報(氏名/住所/電話/メール)・マイナンバー・医療情報・未公開の財務やM&Aの情報・他社の機密明確な利用権限と承認、安全な契約と環境を確認できない限りNG

もっと短い目安もあります。 「これ、X(旧Twitter)に書いたら困る?」と自分に聞いてみてください。 困りそうなら、AIにも入れません。 この線引きだけでも、かなりの事故を避けられます。

それでも判断に迷うときは、情報をそのまま渡さず、書き換えてから渡してください。

元の情報書き換え後
顧客名A社
住所東京都内
契約金額概算
未公開の数字架空の金額
契約書の原文要点だけを残した文

書き換えたあとに「これで意味が通じるか」を確かめてから送れば、仕事の精度も保てます。

注意点

送信ボタンは、押したら取り消せない

送信ボタンを押した瞬間に、書いた内容のコピーが相手のサーバーへ届きます。 あとから履歴やアカウントを消せるサービスもあります。 ただし、削除までの保持期間、法令や安全上の例外、すでに始まった学習への影響は、各社で違うのが実情です。

今日からできる5つの対策

今日から手をつけられる、現実的な5つです。

5番目の「送信前3秒」は、設定を整えたあとに残る最後の守りです。手間はほとんどかからないのに、よく効きます。

やってみよう

この2つを済ませておけば、クラウド型AIへの入力は外部への送信だという前提が身につき、うっかりの貼り付けもぐんと減らせます。

会社として複数人で使うなら、「社内の生成AI利用ガイドライン」を1枚作っておくとトラブルを減らせます。 これは別の記事で扱います。