第一章 迷い道の提灯
人の世のはずれ、月が少しだけ近く見える坂道に、一つだけ消えない提灯がある。その提灯を追いかけた者だけが、朝の来ない夜市にたどり着く。こまりは、その提灯の番をしている狐だった。番といっても、たまに居眠りをする。
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人の世のはずれ、月が少しだけ近く見える坂道に、一つだけ消えない提灯がある。その提灯を追いかけた者だけが、朝の来ない夜市にたどり着く。こまりは、その提灯の番をしている狐だった。番といっても、たまに居眠りをする。
夜市の屋台は、買い物をするためだけの場所ではない。迷い込んだ子どもに、店主たちは声をかけ、りんご飴を一本持たせて帰り道を教える。こまりが最初にもらったのもりんご飴だった。以来、りんご飴を食べると、なんでもできる気がしている。
狐社で育ったこまりは、射的が得意だ。でも狙いました、と言って外す夜もある。外れた景品は、別のだれかの手に渡って、夜市に新しい笑い声が増える。こまりは、それでいいと思っている。
お祭りが静かになるころ、こまりは縁側に機材を並べる。夜市の店主が「これ、使えるんじゃないか」とくれたマイクと、ぽわの灯り。歌声も笑い声も、九十九の鳥居を越えて、あなたのいる部屋まで届く。2025年2月2日、その最初の夜。
最後の鳥居は、入るためだけにあるのではない。夜市で過ごしただれもが、次の夜にもう一度こられるように。だからこまりは今夜も、提灯を灯して待っている。